顧客が本当に必要だったもの|システムコンサルティングの第一歩

これはプロジェクトマネジメント界隈で昔からある有名な絵です。亜種も沢山あるのですが、おそらくこれが元ネタと思われます。

情報システム導入に際し、「顧客が本当に必要だったもの」とその周辺の情報が如何に乖離しているかを分かりやすくユーモラスに示しています。

よくやり玉に挙げられるのが、右上の「営業の約束・表現」だったりするのですが、今回は左上の「顧客が説明した要件」と、右下の「顧客が本当に必要だった物」に注目してみます。

ユーザが説明した要件が「正」とは限らない

便宜上、システム発注者となる顧客のことをここでは「ユーザ」と呼ぶことにします。

通常、システム導入に際し、ユーザは要件を説明します。「ここをこんな風にしたい」「〇〇を実現したい」というざっくりした表現もあれば、「ここに〇〇ボタンを追加してメール送信できるようにしたい」という細かい表現もあったりします。

しかし、図で表現されているように、ユーザが本当に必要なもの・ことが、実はユーザ自身が把握しきれていないケースもあります

そこが置き去りになってしまうと、折角実現されたシステムが、「なんか違う」「こういうはずじゃなかったのに」という残念な結果になってしまうことがあります。

何故そういう結果になってしまうのでしょうか。

「要件」と「機能」の違い 目的と手段の混同

いろいろな方に話を聞いていると、要件と機能を混同されているな、と思うことがよくあります。

分かりやすくいうと、やりたいことの目的と、それを成すための手段を混同しているとも言えます。よく言う目的と手段の混同です。

例えば、「コミュニケーションを取る」という目的があった場合、その手段の一つとして「メール」があるとします。

しかし、手段ということであれば、他にもLineやFacebookメッセンジャー、チャットツールなど、沢山の「手段」があります。

ところが、仮にユーザが「メールという手段しか知らなかった場合」はどうなるでしょうか。

「コミュニケーションを取るという要件=メールの導入」という図式が出来上がってしまいます。目的と手段がイコールになり得ます。

メールは飽くまで手段であります。要件ではなく、沢山ある機能のうちの一つにしかすぎません。

しかし、チャットツールなどは検討の遡上にも乗りません。何故なら知らないからです。

そうなると、本来「コミュニケーションを取りたい」とすべきであった「要件の説明」が、「メールシステムを導入したい」という「手段の説明」に置き換わってしまいます。

例として「コミュニケーションという目的」と「メールという手段」という話を挙げましたが、似たような例は沢山あります。

「情報システムを構築して」という依頼を受けることはよくあります。それが左上の図です。しかし、言ってみれば情報システム構築は「手段」であり、目的と必ずしも一致しないことがあります。

最終的な目的は、販売機会の増加による売上増や、業務効率化による利益増だったりするもので、情報システムという手段はそれにリンクするものでなければなりません。

ところが往々にして、手段が目的化するケースは後を絶ちません。

御用聞きであることの功罪

注文があれば、注文通りの物やサービスを提供するのが商売の基本です。

例えば美容室で「〇〇のような髪型にしてほしい」という注文をしたのに、「この方が似合いますよ」と勝手に丸坊主にされてはたまったものではありません。

しかし、情報システムにおいては、前述したとおり、ユーザの要求が必ずしもユーザの満足に繋がるとは限りません。

ユーザは業務のプロでありますが、システム設計のプロではないのです。したがって、ユーザのプロの部分を尊重しつつ、場合によっては踏み込んだ提案をする必要もあります。

とはいえ、ユーザにとっては、「丸坊主の方が似合いますよ」と注文と違うことを言われるのは鬱陶しいと思うこともあるでしょう。

なので、ユーザの要求に対しては何も言わず、注文通り黙って言われたものを作るというケースも中にはあります。そういう風に割り切ってシステムやサービスを提供するベンダーもいるでしょう。御用聞きのように、黙って言われたものを作るだけでも、ユーザから重宝がられる場合もあります。

しかし、それでは「顧客が本当に必要だったもの」をカバー出来てない恐れがあります。本当の意味で顧客満足に繋がるのかと言えば、疑問符が付きます。

システムコンサルティングの第一歩

ですので、そこで眉に唾を付けて、右下の本当の目的を聞きだす、というか引き出すことがシステムコンサルティングの第一歩となります。

実は丸坊主の方が似合ってモテモテになる可能性が高いと判断したら、それを話し合いながら決めていくというプロセスが必要になります。ユーザの本当の目的が実は「モテたい」ということであれば、髪型だけでなく、モテるための提案をしなければならないということです。

ユーザが話すのは要件(モテたい)なのか、それとも機能(髪を切りたい)なのか、を注意して聞くようにし、必要があれば、多くの手段の中から要件にあった手段を説明します。

その為の引き出しを多く持っておくこともシステムコンサルティングにおいて重要な点になります。

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