「情報共有のハブ」としてのコラボレーションツールの役割
「情報共有のハブとしてのコラボレーションツール」ということについて考えてみました。
最近、多くのコラボレーションツールが出ています。具体的なサービス名で言えば、SlackやTeams、Chatworkなど、社内SNS(Enterprise Social Network:ESN)ということであれば、YammerやChatterもあります。
今回は、組織内でこれらのツールを使いこなすことは情報共有の促進に繋がる、という話をいたします。
この記事の目次
「情報共有のハブ」とは何か
組織内には様々な情報システムが存在します。
ビジネスの肝となる基幹業務システム(販売、生産、購買…)、会計システム、グループウェア、勤怠管理、人事・給与管理、ファイルサーバ、セキュリティシステム…大小様々な情報システムが存在します。
「情報共有のハブ」とは、それらの様々なシステムにアクセスするための起点となるポイントのことを指します。なお、ハブとは「中継地点」という意味で、「ハブ空港」「物流拠点のハブ」という形でも使われます。
現在、多くの組織でその「情報共有のハブ」の役割を担っているのがメールです。
メールボックスを見てみると、日常の業務連絡、営業メール、スケジュール調整、メルマガ、スパム、システムやサービスからの通知などが溜まっています。
- タスクの依頼メールが来た
- 業務指示のメールが来た
- 顧客からの注文が来た
- 会議資料が添付されて来た
- システムアップデートの通知が来た
といったように、仕事の起点となる情報がメールで流通していることも多いでしょう。
そのように、多くの情報が集約されていることから、メールは情報の中継地点である「情報共有のハブ」の役割を果たしていると言えます。
情報共有のハブとしてのメールの問題点
しかし、メールは「情報共有のハブ」としては最適な道具だとは限りません。
私は、「情報共有のハブ」としてメールを使うことはベストな「最適解」ではなく、とりあえず現時点で一番マシな「現実解」だと思っています。
詳細は下記をご覧ください。
メールを情報共有のハブとして使うことの問題
メールの問題点としては、一言で書けば「情報が混在して整理整頓しにくい」ということになります。
メールは汎用性が高く、基本的にどんな情報でもやり取り出来てしまいます。しかし、それは一方で「何でもさせてよい」ということではありません。ツールには、それぞれ得意なことをやってもらうのが鉄則です。
カレーを食べる時にはスプーンを使いますし、ソバを食べる時には箸を使います。ソバをスプーンで食べられなくは無いですが、罰ゲームの世界です。バカっぽいです。ツールは場合によって使い分けるのがスマートです。メールにも同様のことが言えます。何でもかんでもメールでやり取りするのはもはや罰ゲームの世界です。
情報の蓄積に向いているのはファイル共有サービスやWikiのようなシステムですし、ちょっとした連絡に向いているのはメールよりもメッセンジャーアプリです。
メールの得意なところと言えば、組織外とのやり取り、単純な通知の受信などでしょう。
現在のように、多くの情報システムや人が存在する中で、情報の流通を整理する役割である「情報共有のハブ」の存在は依然として最重要事項なのですが、メールが今も変わらずその役割を十分に果たせているかと言えば、私はそうではないと考えています。
「情報共有のハブ」としてのコラボレーションツール
情報流通において「情報共有のハブ」が最重要という話を書きましたが、その情報共有のハブとしてより適しているツールはメールではなく、冒頭で例示したコラボレーションツールやESN(Enterprise Social Network)だと考えます。
というのは、メールのデメリットが解消され、かつ他の情報との連携が容易だからです。
「フロー」と「プッシュ」はタイムラインでやり取りする
情報が流通するトリガーになるのは、「プッシュ」です。
電話やメール、メッセンジャーアプリ、システムからのアラートなどから情報が届く(プッシュされる)ことが業務の起点となることは多いと思います。
そのプッシュされた情報が集まる場所に対し、情報共有のハブという表現をしましたが、これをメールからコラボレーションツールやESNに置き換えるのがスマートだと考えます。
これらのツールには、共通して「タイムライン」というインターフェースが用意されています。
タイムラインは情報が時系列に表示され、古いものから表示されなくなっていくというインタフェースで、情報が書き込まれたそばからどんどん流れていきます。はじめのうちはとっつきにくいかもしれません。
ただ、メールは「個々人のメールボックスに配信する」という構造なのに対し、タイムラインは「個々人が共通の場所に投稿する」という構造のため、初めから自動的に情報が共有された状態になり、いわゆる「見える化」が進みます。
メンションなどの機能を使えば、一対一や一対多のやり取りも可能ですし、ハッシュタグ等の機能により情報の整理も容易です。当然検索も出来るので、後からメッセージを探すことも可能です(Slackの無料プランには制限がありますが)。
さらに人同士のやり取りだけでなく、IFTTTやZapierなどのシステム連携サービスなどを利用すれば外部システムからダイレクトに更新情報などをタイムラインに投稿できるので、その点でも「情報共有のハブ」として十分機能します。
これまでメールでやり取りしていたフローとプッシュ型の情報は、タイムラインを使うことでも代替可能なのです。さらに「情報の共有しやすさ」という観点に立てば、タイムラインを備えたコラボレーションツールやESNはメールよりも優れていると思います。
結局は「使ってみれば超便利」という個人的感覚の話になってしまいますが、汎用的に利用できる「情報共有のハブ」としては、コラボレーションツールやESNが「ポストE-mail」になる可能性は大きいと考えています。
ストックの共有は苦手なので、別のツールを利用する
一方で、コラボレーションツールやESNが苦手とする部分もあります。
それは情報のストックです。
タイムラインはフロー情報の共有には向きますが、ストック情報の蓄積には残念ながら向きません。タイムラインだと蓄積したい情報が流れていってしまうからです。
それに対応するためには、別のツールを利用するのがよいでしょう。
ストック型の情報を蓄積するには、wikiのようなサービスが適しています。
使い方の要点としては、タイムラインには情報の実体を置かず、情報の在り処を示すポインタを置くのがスマートです。
WEBサービスであれば、情報の在り処はURLで示されます。wikiのページやWEBデータベースシステムであれば、情報はURLでさし示すことが可能です。
それをタイムラインで共有すれば、ストック情報とフロー情報の両方を上手くカバーすることが出来るでしょう。
情報共有のハブとしてのタイムラインにアクセスすれば、組織内のあらゆる情報に到達出来るという環境が出来上がります。
組織内の連絡でメールを使うのは禁止してもよい
「情報共有のハブ」をタイムラインを備えたコラボレーションツールやESNにするという話でしたが、それを推進するためには、「組織内での連絡についてはメールを禁止する」というのも荒療治的ですが、効果的です。
メールにはないスピード感でやり取りが出来て、コミュニケーションの質的向上にも役立つでしょう。
まとめ
情報共有のハブとして、コラボレーションツールやESNが有用であるという話でした。具体的な製品名としては、Office365等がコスト面、機能面からみて非常に優れていると考えています。
しかし、組織によって規模、予算、スタッフの習熟度などの条件や、共有すべき情報の要件があると思います。
したがって、「このツールを導入すればOK!」ということにはなりません。
それらの前提条件を総合的に判断し、より適切なツールを選択し、導入計画を立案することが重要になります。
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