「ひとり情シス」も居ない場合はどうするの?

5037ebd440c94acb74fd1104c34c9f80_s前回のエントリでは、「ひとり情シス」の方に向けて「セルフ20%ルールでいろいろやってみよう」というお話を書きました。

このエントリでは、視点を変えて「ひとり情シスがいればまだ良いけど、そんな人もいない場合はどうすれば良いのか?」というお話を書きます。
最初にオチを書きますが、「外部リソース(つまり自分のような人間)を上手く使ってください」、という話に着地します。すみません。

情報システムは守りの設備?攻めの武器?

順を追って説明するために、先ず「情報システムは守りの設備か?攻めの武器か?」という命題を考えてみます。

「守りの設備」とは、事務所スペースや什器備品、電気水道など、「当たり前のようにあるけど、いざ無くなると困る」という最低限の装備です。これらは多くの場合、直接的に売上アップにつながるものではないため、同じものであれば維持にかかる費用が安ければ安いほど喜ばれます。

一方、「攻めの武器」とは、直接的に売上アップにつながる装備です。単純な話、工場の生産設備とスタッフを増強し、生産力が拡大出来れば、売上アップにつながります。
こちらは、維持費用が安ければ安いほど喜ばれるという単純なものではなく、リターンとして得られる売上見込みなどが検討された上で判断されます。いわゆる「費用対効果」です。

たとえ千円の投資であってもリターンが0であれば高い買い物ですし、百万円の投資であっても一千万円のリターンが想定されれば安い買い物でしょう。「安い高い」は、金額の絶対額ではなく、相対的に評価されます。

どちらかと言えば「守りの設備」よりも「攻めの武器」を考えることの方がエキサイティングですので、多くの経営者の方は、「守りの設備」は誰かに任せて「攻めの武器」に夢中になります。
自組織のマネタイズの仕組み、「商品を仕入れて売る」「役務を提供して対価をもらう」「材料を仕入れて加工して売る」といった「利益を生む仕組み=勝ちパターン」にダイレクトに関わる方がどうしてもエキサイティングで面白い。私自身もそう感じます。というか、それを采配するのが経営者とも言い換えられます。他人に任せられません。任せたくありません。

ところで、「情報システムという設備」はその「守り」「攻め」どちらになるでしょうか?

私はどちらの側面もあると考えています。

メールなどの情報系システムや、会計や販売管理などの業務系システムは、もはや「無くなると困る」設備です。停まると業務に支障がでます。そういう面では、情報システムは「守りの設備」と言えます。当たり前に利用できるよう、壊れない・停まらないように手当てをする必要があります。

一方で、ネット販売や、受付システム、工程管理システムなど、新しい販売チャネルや、ダイレクトに生産性を向上させる情報システムは「攻めの武器」と言えます。
仮に、ネット販売のサイトがダウンして、一日の売り上げが3割減った、というのであれば「無くなると困る」どころのレベルではありません。「無くてはならない」重要な攻めの武器です。

このように、一言で「情報システム」と書いても、範囲は広く「守りだ、攻めだ」と一方に結論付けてしまうのは性急だと思うのですが、「守りの設備」として認識されている方も多いと感じています。

確かに「守りの設備」という側面もあるので、それは必ずしも間違いではないのですが、ただ、攻めの側面をストーリーとしてイメージ出来れば、情報システムは経営者にとってもエキサイティングなジャンルになりえます。

間接コスト、直接コストという二元論的考え方から脱却すべし

情報が、「人」「物」「金」に次ぐ第4の経営資源だ、と呼ばれることもあります。
組織が収益を生み出す源泉として、「柱となる3つの経営資源がある」と古くから経営の教科書などで言われていましたが、十数年前くらい(?)からそれに「情報」が追加されました。

しかし、情報が第4の柱であるか、ということに関しては、個人的に疑問があります。

なぜなら情報は他の要素との関与の度合いが極めて高く、かつ単体では効果の出にくいものだからです。
既存のマネタイズの仕組みは「人」「物」「金」に集約されます。情報はその3つと同列ではなく、それらを底上げしたり、相互に関連させるものです。鉄砲があっても、打つ人がいなければ何も起きないように、アクションを起こす主体が居なければ何にもなりません。

情報を他の経営資源と有機的に結び付けるものが、情報システムです。

例えば営業社員が居たとして、情報システムによって情報の流通を効率化し、その結果1.5倍のお客様に訪問することが出来るようになれば、0.5人分の直接投資と同等の効果が出ます。
この場合も、あくまで情報システムは裏方です。単体では作用しません。

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情報は、他の経営資源と関わることで、その効果を大きく引き出す可能性を持っています。

しかし、他の経営資源との関わりが薄ければ、何も起きません。情報システムが守りとなるか、攻めとなるかは、情報と他の経営資源との関与の度合いによります。

関与が薄ければ、「守り」以上の評価は出来ません。

しかし、情報と他の経営資源との関与を深めることが出来れば、「攻め」という位置づけも出来るようになるでしょう。

その位置づけが出来るのは、経営者以外にありません。

情報システムは最低限備えるべきである設備だから維持の費用さえかければよい、という感覚であれば、「攻めの武器」の側面を顕在化させることが出来ず、情報システムはますます不良資産化していくことになるでしょう。

ここで重要なのは、間接か直接か(守りか攻めか)、という二元論から脱却した考え方です。

両方の側面があることを前提に、「守りながら攻める武器、攻めながら守る設備」という、玉虫色の物であるという、一種の割り切りも必要です。

肝心な費用対効果が分からない

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話は変わりますが、中小企業白書2013年度版の資料(第二部第4章 情報技術の活用)で、「ITの活用が必要と考えているがITを導入していない理由」という資料があります。

その理由の上位は、やはり費用対効果・コストです。

「攻めの武器」と言っても、その費用対効果が想定出来ないのであれば、投資には二の足を踏みます。自組織の「これまでの勝ちパターン」にどう関わってくるのかが見えない以上、踏み切れないのは当然です。

ましてや、そのための人材を雇うなどとなれば、大きな固定費になってしまうため、慎重にならざるを得ません。さらに言えば、そのような人材のスキルセットも不明確です。

パソコンに詳しければよいのか、プログラムが書ければよいのか、WEBデザインが出来ればよいのか。どのようなスキルがあれば情報を活用して自組織の「攻めの武器」を伸ばすことが出来るのか、何が出来ればよいのか正解が分かりません。

状況に合わせて育成するにしても時間が掛かりますし、費用対効果が量化しにくいのも事実です。そのような状況で、情シス担当者を一人でも設置するというのは、賭けに近いものであります。

確かに経営判断には賭けの側面はありますが、賭けの鉄則は「余剰資金でトライする」、「勝算が不透明な賭けからは降りる」です。

ではどうすればよいのでしょうか?

失敗時のダメージを最小化する投資

ノウハウがない場合、一番手っ取り早いのは、「ノウハウがある人を招き入れる」です。チームを補強するために外国人助っ人選手を雇ったり、新規事業に進出する際にM&Aでその分野の企業を買収したり、ということはよく聞く話です。

前段で「賭け」という表現を使いました。

助っ人外国人やM&Aは、成功時のリターンも大きい反面、失敗時のダメージも大きな賭けです。

情報システムの投資も大きな賭けに似た面がありますが、ただ、10年程前と比べて決定的に違うことがあります。

それはミニマムベット(最低賭け金)です。

従来であれば、情報システムの投資には、まとまった費用と時間が必要でした。物理サーバを購入する、専用ソフトウェアを外部の事業者に製造してもらう、データベースシステムのライセンスを購入する、といった内容で、簡単に数百万円、場合によっては数千万円も掛かります。

これでは、賭けをするにしても、ミニマムベットがあまりにも大きく、検討の遡上にすら乗りません。余剰資金でトライ出来ません。

しかし、今であれば、様々なクラウドサービスを活用することにより、その費用を大きく圧縮することが出来ます。資産計上をせずに、利用料金だけの負担で済むケースも多く、仮にシステム構築に失敗したとしても、埋没コスト(サンクコスト)化することもある程度避けられます。

ではどんな風にそれらのクラウドサービス等を活用すればよいのか、という采配をする人材面ですが、バーチャルCIOといった外部のリソースをご利用いただくのも、「人材面のミニマムベット」を低くするご提案として挙げておきます。助っ人外国人と違い、月単位で対応しますので、不要とあらば戦力外通告で構いません。

ご相談いただければ、柔軟に対応させていただきます。

参考

参考情報として、以下二つのリンクを張り付けておきます。

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