フィードバックしてますか?情報共有におけるホウレンソウの落とし穴
報連相(ホウレンソウ)という言葉があります。いきなりですが、引用します。
職場における「報告」「連絡」「相談」を徹底することによって、組織の中で必要な情報がきちんと流れるようにしようという改善活動のこと。ビジネス・コミュニケーションの基本を示す言葉として、新人研修などでは必修事項とされることが多い。 「報告」は上司の指示に対する正規の報告を意味し、「連絡」は同僚や関係部署などの間で交わされる情報交換・情報共有、「相談」は迷いや困ったことがあったときに上級者や専門家に相談し、相談を受ける側も親身に話を聞くことをいう。
@IT情報マネジメント用語事典 http://www.atmarkit.co.jp/aig/04biz/horenso.html から
組織人であれば、誰もが最初に叩き込まれる基本事項ではありますが、一方で中々定着しないという声も耳にします。
今回はその定着しない理由について解説していきます。
報連相が定着しない大きな理由
報連相が定着しない理由について、よく出る意見としては「部下の資質」に依存するものが多く、どちらかと言えば部下側に要因があるという意見なのですが、私は逆だと考えています。
報連相が定着しない理由はずばり、
- 適切な場を用意していない
- フィードバックがない
- フィードバックがあってもネガティブなもの
という、管理側の問題にあると考えます。
適切な場を用意していない
まず、「適切な場を用意していない」ですが、例えば、上司が常に忙しくしていて話しかけにくい、といった状況になっているケースはよくあります。
上司としては「必要があれば話しかけてくるはず」「分からないことがあれば聞いてくるはず」と思っていても、「話しかけるなオーラ・忙しいオーラ」が出ている方には中々話しかけにくいものです。
部下側が自分の職務を遂行出来ないことがあれば、部下側に上司に報告、相談する義務があるとはいえ、そのきっかけを与えにくい状況は望ましくありません。
「対話のドアはいつでも開いている」といいつつ、話しかけるなオーラを発してしまうのは矛盾します。きちんとした場を設ける必要があります。
「場」は、オンライン、オフラインどちらでも構いません。
オンラインツールであれば、社内SNSや日報ツール、掲示板、なんでも良いです。ただし、メールについては、このブログで何度も書いているように共有に向かないのでよしましょう。
オフラインの場合は、5分でもミーティングの場を設けるなどしましょう。これも朝礼、昼礼、夕礼なんでも構いません。とにかく情報共有の場を設けることが大切です。
オンライン、オフライン、いずれにしても、報連相を定着させるには、最低限、部下の話を吸い上げる「場」の提供が重要になります。
フィードバックがない
次は、フィードバックです。
ひとまず「場」を設けてみたものの、中々情報が上がってこないということはよくあります。
しばしば見落としがちなことに、報連相は双方向のコミュニケーションだということがあります。
冒頭の報連相の解説の引用にも、
相談を受ける側も親身に話を聞くことをいう
とあります。
仕事を請けた部下側に報告する義務があるのは当然ですが、上司側も報告に対してのフィードバックをする義務があります。
最悪なのは、報告を受けてもノーリアクションなケースです。それでは、報告が伝わっているのか、そもそも見ているのかどうかすら報告者には分かりません。
リアクションがなければ、報告する側も人間ですので、報告のモチベーションが保てません。海に向かって石を放り投げているような虚無感が出るでしょう。
「俺に情報を集めよ」と号令をかけて集めたところで、その結果として何も起こらないのであれば、結局報告する側も報告すること自体の意味が分からなくなり、徐々に定型的な報告になっていったり(質の低下)、報告の回数が減ったり(量の低下)していきます。当然定着もしません。
最低限、「見たよ」「見てるよ」というリアクションをすること、可能であれば内容について指摘、フォロー、アドバイスなどのフィードバックをすること、さらに可能であれば労いの言葉を掛けることが大切です。
適切なフィードバックが出来なければ、時間の経過とともに報告の質と量が減少していきます。見られてないのであれば報告しても無駄ですので、最終的にはゼロになるでしょう。
フィードバックがあってもネガティブ
フィードバックが重要だという話を書きましたが、その内容がネガティブ一辺倒であってはいけません。
昔は今でいうパワハラまがいのミーティングなどちょくちょくありました。私も経験したことがあります。毎週、報告内容を全否定される圧迫面接のような定例会があり、ものすごく憂鬱になったものです。
「そういう場で鍛えられる」という側面があるのは否定しませんが、鍛えられる前に倒れてしまっては元も子もありません。
単純な話、否定だけではやる気が削がれますし、萎縮します。
確かに、ダメ出しされても這い上がって来てほしいと考えるのも一理あります。
「這い上がって来ない人は必要ない、辞めてもらって結構」と割り切る管理者もいるでしょう。実際にそういう方も知っています。振るいにかけて、残った者だけ育てるというライオンのような育成法です。
しかし、人材不足のご時世、そのようなやり方では持続しないと思います。いずれ行き詰るでしょう。
内容的にはダメ出し、否定せざるを得ない時もあるにはあります。しかし、そういう場合は、「確かに~、しかし~」の構文で一旦肯定することが大切です。否定よりも肯定の方が高度で知恵を使います。ダメ出しや否定は楽なので(今風に言えばマウントも取れるし)、否定だけに逃げる人もいますが、管理者としては失格です。
有用な報告を促すためには、否定だけではなく、次につながるヒントを出す等の配慮が必要です。
部下の教育だけでなく、管理者の教育も必要
要するに、報連相の指導をする対象は、部下側だけでなく、管理側にも広げる必要があるということになります。
きちんとした「場」を用意すること、フィードバックをすること、否定ばかりしないこと、といったシンプルなルールで構いません。
そして、「場」は見える化した方がよいです。オフラインであってもオンラインであっても同様です。
一対一より、他の人に見えるような場で行うことが、管理者の訓練にもなります。
発信する者にこそ情報は集まる
あくまで個人的な経験則ではありますが、情報は発信するものに集まります。
したがって、報連相をきちんとしてほしいと思う管理者は自らも発信することが必要だと考えます。
フィードバックだけでなく、タスクの背景や目的、進行中の商談や稟議などの進捗状況など、部下同様、大小様々な情報を発信していけば、部下も報告するべき内容が明確になって情報の質が向上したりという好循環が生まれやすくなります。
まとめ
報連相を定着させるには、上司から部下への情報伝達もセットで考える必要があります。
有用な報告、連絡、相談が欲しいのであれば、自らやって見せるということです。
報連相であっても、基本はギブアンドテイク、双方向のコミュニケーションという話になります。上役だからといって、ギブが免除されるわけではありません。テイクアンドテイクになれば、必要な情報は上がってきません。むしろ上役だからこそ、先行してギブしていく必要があるでしょう。
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