MS-ACCESSをフロント、Sharepoint Onlineをバックエンドとした小規模アプリケーション
Office365のBusinessプラン以上でデスクトップ版のAccessも利用できるようになってから、Access推しをしています。
というのも、Office365のBusiness PremiumプランではSharepoint Onlineも利用出来て、データベースとしての役割も果たせるからです。
つまり、開発効率のよいAccessをフロントエンドにし、バックエンドのデータベースとして、「Sharepoint Onlineのカスタムリスト」を利用するという構成も容易に出来るようになりました。今回はその辺の話題になります。
このエントリが想定しているターゲットは、「システムを活用した業務改善に興味のある中小企業の経営者・担当者」になります。
この記事の目次
システム構成のジレンマ / コストと効果のバランス
お客様に情報システムを提案するにあたって、いつももどかしいと思うことがあります。
それは、一言で言えば、コストと効果のバランスです。
お金を掛ければ安全で便利なシステムを提供出来ます。ところが機能や安全性がオーバースペックだったりすると、それに比例して費用負担も過大になります。結果、導入に踏み切れません。
その一方で、エクセルのみで業務システムを組むといった場合は、エクセルのライセンス以外の費用負担はないものの、可能なことが限られてしまいます。バックアップにも不安が残ることもあります。
システムの初期導入というのは、目標を設定することは出来ますが、費用対効果が測りにくいものです。
そんな中で大きな投資をするのはリスクがあります。現行のままでいいという判断が働くのも自然なことです。
ミニマムベットを低くする構成
しかし、投資のミニマムベットが低ければ、やってみようという気持ちにもなるのではないでしょうか。
今回は、小規模なシステム構成としてもっともバランスのよいものの一つとして、Access+Sharepoint Onlineを挙げてみます。
使いやすいデスクトップアプリケーションとしてのAccessの活用、その一方でデータの保管はクラウドで安全に行いたいという要件の場合には適した構成です。
ランニングコスト的にもOffice365のライセンス料のみなので、過大にはなりません。
もちろん要件によってベストな処方箋は変わります。スマホ等との情報共有に主眼を置く場合はkintoneやPowerAppsの方がよい場合もあります。Access+Sharepoint Onlineは多くの構成例のうちの一つとなります。
中小企業の業務改善にAccessを活用
マイクロソフトAccessはPC上で動作するデータベースソフトです。
入力フォームや、帳票の印刷などを含めたアプリケーションが(割と)簡単に構築出来ます。Accessは基本的にスタンドアロン環境(単独のパソコン)で利用するものですが、構成によっては、今回紹介するように複数人が利用するネットワーク構成でも利用可能です。
Accessを利用するには、Office365のBusinessプラン以上が必要になります(BusinessEssentialsは不可)。
Accessの強み1.開発効率の高さ
Accessの強みの一つは、入出力フォームがVB(VisualBasic)のように手軽に開発できる点です。
データソースが指定されていれば、ウィザードを使ってフォームを簡単に作成することが出来ます。
多くのコントロール(テキストボックス、ボタン、リストボックス等)から用途に合ったものを選択し、柔軟なUI(ユーザインタフェース)を作れます。
最近のWEBアプリケーションのようなイケてるUIからは少し外れた感じにはなってしまいますが、業務アプリであればその辺りは許容できるかと思います。
Accessの強み2.Windowsネイティブアプリのような軽さ
Windowsネイティブアプリのような軽い操作感もAccessの強みです(そもそもAccessはネイティブアプリですが)。
これはWEBアプリケーションと対比した時に違いが明らかになると思います。kintoneのような、SPA(※)ではないWEBアプリケーションであれば、画面遷移などが伴うため、動作がもっさりした感じになることがあります。
Accessの場合、画面描画・画面遷移はパソコン内で行われますので、ストレスなく利用可能です。
※SPAとはSingle Page Applicationの略で、主にJavaScriptで実装された画面遷移の伴わないWEBアプリケーションを指します。
Accessの強み3.帳票への柔軟な対応
「帳票なんてオワコン」という方もいらっしゃるかもしれません。部分的には同意しますが、事務処理の現場においては、印刷した帳票をチェックして消し込む、書き込むといった業務や、納品書や請求書を発行する業務は当面なくなりそうもないとも感じています。
Accessの場合、事務処理に利用するその帳票を(割と)簡単にかつ柔軟に設計することが出来ます。明細サブレコードを繰り返し表示したり、複数のマスタからデータを抽出しながら表示したり、ということが普通に出来ます。これはWEBアプリケーションが苦手とする部分で、Accessの大きな強みと言えます。
総合的に、Accessは開発工数を抑え(=初期導入費用を抑え)て構築できるため、ランニングも含めたトータルコストが安く上がるというメリットがあります。
Accessの課題としては、スタンドアロンを想定しているがゆえに、データベースのバックアップや共有などの課題あるのですが、その点は次に述べるSharepoint Onlineで解決されます。
Sharepoint Online の活用
Sharepoint Onlineはマイクロソフトの提供するクラウドサービスで、WEB上での情報共有に適したサービスとなります。Office365のBusiness Premiumプランであれば、ほぼ機能制限なく利用することが可能です。
Sharepoint Onlineは様々な機能がありますが、機能の一つにデータを二次元のリストとしてWEB上で保存・参照することも出来るものがあり(リスト機能)、今回のケースではSharepoint Onlineの「カスタムリスト」をデータベースとして採用します。
Sharepointではなく、Accessのデータベースを使う場合は、パソコンやNAS(ネットワーク上の共有ディスク)などにデータが保管されるため、複数人で同時利用する場合はデータが破損したりすることもしばしばあります。その点、Sharepoint Onlineであれば意図しないデータの破損に関してはまず心配はありません。可用性99.9%のクラウドサービスです。
データベースの規模が大きくなった場合には、AzureSQLを検討するなどの対応も残されているので、まずはSharepoint Onlineで始めてみるという対応が可能です。
ランニングコストはOffice365 Business Premiumのみ
この構成の最大の特徴は、ランニングコストがOffice365 Business Premiumのみという点です。一人当たり月額1,360円(2019年4月現在)で、最新のOfficeスイートが使えてなおかつSharepointのようなデータベースも利用できるということで、既にOffice365 Business Premiumプランを契約されている方であれば、使わない手はないと思います。
プラン詳細については、下記をご覧ください。
ただし、アプリの保守を外注した場合などは、ランニングコストはこの限りではありません。
Accessのサポートはいつまで?
AccessをカスタマイズするにはVBAというかなり古い言語を使います。したがって、VBAはいつまでサポートされるのか?作り込んだシステムがいつまで利用できるのか?という点がどうしても気になります。先日、エクセルがPythonをサポートするという話題もあって、VBAはどうなる?とザワついたこともありました。
結論を言えば、Access2019のサポートは2025年までとなっています。したがって、少なくともあと数年は既存の資産を利用できるということになります。
Sharepointの容量はどのくらい?
Sharepoint Onlineの容量は、Office365 Business Premiumプランで1組織あたり1TBの容量となっています。通常の使い方であれば、上限に達する心配はまずないでしょう。
また「リスト」機能のレコード総数は3千万件とも言われているので、ほぼ無制限に利用できると考えて差し支えありません。ただし、1リスト(テーブル)辺りの件数が増えると、どうしても処理パフォーマンスは低下するようですが、それは致し方ないものとして許容するしかありません。
Accessを利用した業務アプリケーションの開発も承っております
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