情報共有ツールとしてのメールの限界
業務上の連絡をするのにメールは便利です。
便利なので、多くのシーンで使われるのですが、逆に多くのシーンで使われすぎるが故に、不便に感じてしまうことも少なくありません。
- 提案資料を添付でやり取りしていたが、どれが最新版が分からなくなってしまった
- 〇〇の案件に関するやり取りを時系列でまとめてみたいのに、過去のメールが上手く整理出来ない
- あまり関係のないメールがCCで送られてきて、メールボックスが埋まってしまう
というのはその不便に感じる代表的な例です。
今回は情報共有ツールとしてメールを使うことの課題について述べてみます。
結論としては、「メールばかりに頼るのではなく、情報の属性に応じたツールの選択をしましょう」ということになります。
この記事の目次
メールの構造的課題
メールには、その構造に起因する課題がいくつかあります。
これらの課題は、情報の流通量が少ない時代であれば顕在化しなかったものでありますが、現在のように情報の流通量が爆発的に増えた今では、冒頭に挙げた例のように目に付きやすくなってきています。
メールの構造的課題を明らかにすることは、メールでの情報共有の限界を知り、それに代わる新たなツールを模索する動機となると思います。
課題1:複数人、複数の話題でのやり取りが苦手
まず、メールの第一の課題ですが、複数人でのやり取りが苦手という点があります。
システムからの一方的でそれっきりの通知などであれば問題ないのですが、スケジュール調整や、意見交換などの用途になると、宛先の複雑さが増します。
CCや転送を繰り返すうちに、ある話題がフォークのように分裂したり、いつの間にか新しい話題にすり替わったり、といった経験は多くの人にあると思います。段々混線してくると、ツリー表示しても追いかけにくくなります。
また、複数の話題が同時進行することもあります。
「〇〇日の営業会議資料作成について」「□□の提案資料に関して」といった複数の話題が同時進行すると、メールボックスにそれらが混在してしまい、さらに返信が積み重なっていくと訳が分からなくなります。読み解くこと自体に時間が掛かってしまいます。
このように、複数人でのやり取り、同時進行するやり取りについては、メールが苦手とするところでしょう。
後から俯瞰して見るということにも不向きです。
基本的に、メールの中身を確認するには、一つ一つの件名を見て、本文を展開しなければ読めません。話の流れを切らずに読み取るには手間が掛かってしまいます。
課題2:CCであふれかえってしまう(CC爆弾?)
メールは手軽にCC(BCC)を付けることが出来ます。手紙と違って、一度に複数の宛先を持つことが出来る訳ですが、この機能は情報共有によく使われます。
- Aさん宛のメールだけど、念のためB部長にもCCしよう
- 業務メールは基本的に関係者すべてにCCしてください
- 社外宛のメールは必ず上司もCCに入れましょう
というように、情報を冗長化する運用はよくあると思います。しかし、CCを受けた側はどうでしょうか。大量のメールが自分に届くようになり、いちいち中身を確認していられません。自分とあまり関係のない内容だと尚更です。
これでは、「とりあえずCCしてあるから」という送信者のアリバイ作りにしかなりません。本当の意味で情報は共有されていないことは想像に難くないでしょう。
課題3:情報の属性が混在してしまう
基本的に、メールはフロー型でプッシュ型の情報のやり取りに向いているものです。
フローとストックの情報を整理するには、それぞれに適したツールを選択する必要がありますが、あらゆる連絡をメールでやり取りしてしまうと、メールボックスの中にはフローの情報もストックの情報も混在してしまいます。
日報や顧客対応履歴など、本来共有データとして保管しておきたいストック情報が、個々人のメールボックスに配信されてしまうような運用になると、後から俯瞰して参照出来ないなどの弊害も出て来ます。
また、個人のメールボックスは当然ながら第三者からは見られませんので、情報がタコツボ化していきます。共有しているつもりが、逆行してしまいます。
課題4:情報の所有者が発信者ではなくなってしまう
一度送信されたメールは、送信者の手を離れ、受信者のメールボックスに届きます。
送信ミスをしても取り戻したりすることは出来ませんので、間違った場合は、後から訂正メールを送る運用しか出来ません。
本来、送信者であるべき情報の所有者が、受信者となってしまうのです。
このような構造のため、イヤな考え方ですが、送ったメールを改ざんされて転送される、といったことも起こり得ます。
SNSやwikiなど、オープンな場での情報共有であれば、情報の所有者は情報の発信者という、あるべき状態になります。
課題5:宛先を指定しなければならない
ものすごく当たり前に思われるかも知れませんが、メールを送信するには宛先を指定しなければなりません。ということは、指定された宛先にしか情報が届かないということです。
SNSが普及した今、宛先のない情報共有もあり得ますが、メールだとそれは不可能ということになります。宛先のない不特定多数へのメールは、メーリングリストやメルマガという形で運用するしかありませんが、厳密に言えば不特定多数ではなく、事前に登録された人が宛先になります。
「宛先のない情報共有」というのは、重要な視点だと考えています。
このブログにしても、特に誰宛というものではありません。ですが、誰かと共有したい、誰かの役に立てば幸い、という考えからブログという形でインターネットに流しています。これも情報共有の在り方の一つの形です。
今後の情報共有を考えていく上で、「宛先のない情報共有」というのは、人と人を結び付けたり、新たな知見を生み出すのに重要な役割を果たすでしょう。
ところが、メールだと「宛先以外には届かない」という構造的短所があります。
まとめ
メールは汎用的に利用できるツールであるが故に、情報の属性を無視しても何とか使えてしまいます。
「何とか使えるから使う」というのもアリですが、生産性の向上を見据えた情報共有に本気で取り組むのであれば、メールに偏った情報共有からは脱却し、グループウェアや社内SNS、データベースシステム、Wikiなど、様々なツールの中から、新たな道具を模索し、組み合わせて活用する必要があるでしょう。
まずは、組織内で流通している情報を洗い出し、それらの属性を見極め、しかるべきツールで手当していくべきと言えます。
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