情報共有に前向きに取り組めない理由とその解決方法

クライアントから、「中々情報共有が進まない」という声を聞くことがあります。

話を聞いてみると、「スタッフが前向きに取り組んでくれない」という状況が大半なのですが、その取り組んでくれない傾向は大体5つくらいに集約出来そうなので、今回はそれらを紹介いたします。

併せて解決方法の指針も書いてみます。

情報共有に前向きに取り組めない理由

情報共有に前向きに取り組めない理由には、いろいろ複合的な要因があるのですが、5つに分類して見出しを付けるとしたら、

  1. 忙しい
  2. そもそも意義が分からない
  3. 慣れない、使いにくい
  4. 必要な情報がない
  5. 別にやらなくてもデメリットもない

という感じでしょうか。

どれも「あるある」だと思います。

組織においてスタッフは必ずしも一枚岩ではありません。大規模な組織はもとより、中小規模の組織においても同様です。「社業に貢献し、自分の市場価値を高めたい!」という強いモチベーションを持つハイテンションな方もいれば、「とりあえず課された仕事をこなして給料もらえればそれでいい」というローテンションな方もいます。どちらも正しいです。

したがって、情報共有にポジティブに取り組まれるスタッフもいれば、そうでないスタッフもいます。そしてポジティブでないスタッフがある程度いると、情報共有は決して進みません。

情報共有を推進していくためには、「ポジティブでないスタッフをどう巻き込んでいくか」が鍵となります。

そこで、5つの理由を分解し、それぞれに対応策を検討してみましょう。

1.忙しい

始めに挙げるのは「忙しい」です。

情報共有のための新たなツールを導入して入力しなければならない、となった場合、従来の業務に加え単純にタスクが増えます。

今でも残業していっぱいいっぱいなのに、これ以上負担が増えるのは勘弁」という声はよく聞きます。

しかし、いっぱいいっぱいな理由は何でしょうか。

その理由を細かく分解していくと、報告が多い、資料作成業務が多い、会議が多い、ノルマが多い、という場合もあるかもしれません。そのような場合にこそ、情報共有による時間短縮が期待出来るので、その方向で説得するもありでしょう。

つまり、「これとこれをやらなくてもよくなるので、こっちをやってくれ」というアプロ―チです。

2.そもそも意義が分からない

これもよく聞きます。

これまでやらなくても業務は回っていたのに何故いまさらそういう取り組みをするのか」という声です。

そういう場合は、「これまで」ではなく「これから」の説明をしましょう。

「業務に属人性がありすぎると組織としてリスクになるので、これからは属人性を極力排除していきたい」、「中堅社員への育成が鍵なので、人材育成という観点で情報共有に取り組んでいきたい」といった「これから」に重点を置いたアプローチです。

3.慣れない、使いにくい

慣れの問題もあります。新しいツールを使うには、習熟コストが掛かります。

IT技術者が多い組織であれば別ですが、そうでないスタッフが多い組織においては、「簡単だから皆使ってよ」というのは、中々通用しません。

「とりあえず使ってみて」だと、どのように使えばいいのか取っ掛かりがないため、いつまで経っても慣れることはないでしょう。

そういう場合は、全体の集合研修や、個別指導などを実施し、使い方とその意図を丁寧に説明する必要があります。

4.必要な情報がない

必要な情報がないというのは致命的ですが、最初の内はどうしてもそうなってしまいます。

「情報がない」→「使わない」→「情報が蓄積されない」→「やっぱり使わない」という悪循環に陥るパターンです。

そういう場合に私が過去に取り組んだことがあるのが、FAQの作成でした。組織内で「よく出る質問」をまとめ、その解決方法を見やすく整理するというアプローチです。

「経費精算の方法」や「休暇・残業申請の方法」「備品購入の方法」など、経理・総務的な内容や、「PCのトラブルシューティング」「ネットワークが繋がらない場合」のように技術的なものなど、スタッフがよく躓くポイントというのは、どの組織にもあるものです。

自分が必要とする情報を「人に聞く」というのは手軽ですが、それは「相手の時間も消費する」というデメリットがあります。それをFAQ化することで、「聞かれる側」の時間を削減し、業務の効率化にも役立つものだということを示すことで「そういう使い方をするのか」ということが伝わり、情報を蓄積するきっかけにもなっていきます。

「情報があった」→「役に立った」→「自分も投稿しよう」→「さらに情報が蓄積される」→「誰かの役に立った」→「もっと情報を蓄積しよう」という好循環にしていきたい所です。

5.別にやらなくてもデメリットもない

これはいわゆる「出来る人」程感じるのではないでしょうか。新たな情報共有のやり方をしなくても、これまでのやり方で成果が出ていれば、積極的な情報共有には取り組み難いです。

「俺のノウハウは俺だけのもの」「他人に知らせたところでメリットがない」という心理です。

その場合、基本的に「俺のノウハウ」は「俺のもの」ではなく「組織のもの」だということを理解してもらう必要があります。また、他人に知らせることに対しては、何らかのインセンティブ(査定に加点など)を付けるのも有効です。

現時点でデメリットは無いかもしれませんが、「そもそもの意義」同様、「これからの視点」を持ってもらい、人材育成などの観点も理解してもらう必要があります。

情報共有を進めるには?「裏の声」「本音」に気を遣う

前向きに取り組めない理由と、それぞれに対する簡単なアプロ―チを挙げました。

しかし、実はそれだけでは不十分なのです。

本当に情報共有を進めるためには、スタッフの「裏の声」「本音」にまで踏み込む必要があります。

情報共有が進まない組織の大半は、このスタッフの「裏の声」にまで踏み込んでいません。

普通に考えれば、「ダメな理由があって物事が進まない」のであれば、その「ダメな理由」を取り払えば進むはずですね。「慣れない、使いにくい」のであれば、単純に「使いやすくして慣れてもらう」とすればよいはずです。

ところが、情報共有に関して言えば、組織風土や個人個人の価値観も関わってくるため、そのように「使いやすくすれば使ってくれる」と理路整然と進むことは残念ながらあまりありません。

そもそも、「使いにくい、慣れない」という理由を挙げる人の「裏の声」「本音」は、「慣れるつもりがない」「目立ちたくない」だったりします。

「意義分からない」という方も同様で、そもそも「意義を分かるつもりもない」だったりします。

「忙しい」という人は、工夫して時間を捻出するつもりもないのかもしれません。時間が確保されたとしても、「忙しい状態」から脱出するつもりがないのだとしたら、時間があっても何かと理由をつけて忙しさを演出するでしょう。

そういう「裏の声」「本音」というのは、大体話せば分かります。何かにつけて「ダメな理由」が湯水のように湧き出てくる場合は、「裏の声」「本音」があると見てよいでしょう。

ダメな理由に対応するだけでは不十分

という訳で、情報共有を推進していくためには、単に「ダメな理由」を潰せばよい訳ではなくて、「裏の声」「本音」をフォローする必要があります。

人は新しいものに対して本能的に警戒心を持つものです。

特に情報共有ツールなどの導入など、新しい取り組みについては、慣性の法則のように、中々動かないことがあります。逆に言えば、一度動き出しさえすれば今度は止まりにくくなるでしょう。

裏の声をフォローするには、ずばり「腹落ちさせること」が重要になります。

キーパーソン(インフルエンサー)をオトす・仲間にする

組織において「話が通じにくい人」というのはいますが、「話の通じない人」は基本的にいません。「ぜってー聞かねー」というのであれば、組織にいる理由がないからです。

したがって、どのようなスタンスのスタッフであろうと「話せば分かる」はずです。第一歩は話を聞いてもらう事になります。まるで営業のテクニックのようですが、根は同じです。新しい取り組みをしてもらうことは、組織内で営業することとあまり変わらないのです。

そこで「誰に営業するか」ですが、それは業務の中心人物がよいでしょう。営業成績のよいスタッフだったり、事務方のお局様のような方だったり、それぞれのフィールドで、キーパーソンのような方は必ずいるはずです。最近の言葉で言えば、インフルエンサーです。

まずは、インフルエンサーに意義を理解してもらい、仲間になってもらうことが重要です。

重要なのはオフラインコミュニケーション

仲間になってもらうためには、対面でのオフラインコミュニケーションが重要になります。

表面的な説明だけだと「良い取り組みですね、賛成です」で終わることも多いですが、M岡S造のように熱量を持って対応することは、他人亊ではなく、自分亊として理解してもらうことに繋がります。「そういう意図があるのか」「自分に期待されている役割はそういうことなんだ」と明確に腹落ちさせることです。

必要があれば、一度だけではなくて、何度もアプローチしましょう。これは一種の洗脳とも言えますが、そのくらいの熱量をもって取り組まなければなりません。

そして、キーパーソンさえ仲間に出来れば、情報共有の推進は格段にやり易くなります。そのためにしつこく営業を掛けましょう。

まとめ

前半は「前向きに取り組まない表面的な理由と対応方法」を、後半は「裏の声」「本音」に注目したアプローチを書きました。

前半だけでは不十分で、後半こそがキモになる部分であると考えます。泥臭い精神論的な話になっていますが、デジタルツールとはいえ、結局使うのは人間です。精神論なくしては進まないこともあるのです。

これは情報共有だけでなく、スタッフを巻き込んで新しい取り組みをする際には汎用的に使えそうなアプローチだと思います。

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