情報共有によるフラットな組織のデザインについて

組織構造のデザインは、情報共有の成否に大きな影響を及ぼします。

「組織が複雑すぎて情報伝達に時間が掛かる」といったことはよくあると思います。

今回は、情報共有による情報伝達ということに焦点を当て、組織構造のデザインについて述べてみようと思います。

階層型組織の役割

多くの組織では、ライン組織のような階層型の組織構造を採用していると思います。これは人員管理や情報伝達において非常に理にかなった形態です。

  • 情報の伝達経路が一本化される
  • 職務分掌が明確になる
  • 責任の範囲が明確になる

といったメリットが階層型の組織にはあるからです。

階層型よりフラット型の方がよいのか…??

一方、情報共有ツールの発達した今現在において、階層型の組織設計を盲目的に踏襲するのは正しいのか?もっとフラットな組織デザインでもよいのではないか?と思うこともしばしばありました。というのも、情報共有ツールは、物理的制約なく情報を共有出来るもので、階層型の組織の垣根を飛び越えて利用することも可能だからです。

ただ、そうは思ったのですが、結局、フラットすぎる組織は設計原則から逸脱してしまうこともあるため、やはり階層型組織がよいという結論に達してしまいました。

組織設計にはいくつかの原則があります。

  1. 責任権限一致の原則
  2. 命令一元化の原則
  3. 専門化の原則
  4. 統制範囲(スパンオブコントロール)の原則
  5. 権限移譲の原則

上記5原則の解説は下記リンク先に譲ります。

フラットすぎる組織設計にしてしまうと、特に統制範囲(スパンオブコントロール)の原則や、命令一元化の原則が崩れやすくなってしまうため、やはり階層型組織は理にかなっているなと感じたところです。

飽くまで経験則ですが、これらの原則から外れた組織デザインにすると、色々不整合が出ることが多いです。例えばよくあるのが、マトリクス型やファンクショナル型で、一人のスタッフが複数の部門や上司の管理下にあると、命令一元化の原則に反し、混乱を招きがちです。

「管理」と「情報流通」の役割は分離すべき

とはいえ、階層型組織を前提にしてしまうと、人と人を繋いだり、フラットなやり取りをしうる情報共有ツールの有効活用との整合性が取れません。

そこで考えついたのが、「管理と情報流通の役割の分離」です。このことを意識すれば、「組織の原則」と「フラットな情報流通」が共存することが出来ると考えます。

どういうことか、順を追って説明してみます。

組織が担う役割は二種類ある

そもそも、組織が担う役割は、大別して二つあります。

ひとつは、管理です。所属長がスタッフを管理(労務、人事面など)したり、業務命令を下したりなど、「現場を統制・統率する役割」です。

もう一つは伝達です。所属長が上からのビジョンや指示を伝えたり、逆に現場からの声を上に伝えていく、「情報伝達の役割」です。

組織は、基本的にこの「現場統制・統率の役割」と「情報伝達の役割」を担います。というか、その役割を実現させるために発明されたのが組織とも言えるでしょう。そして、情報共有ツールが普及していない時代では、その二つの役割は不可分でした。物理的に目の届く範囲、声の届く範囲で、統制と伝達を行うのは当然とも言えるでしょう。

しかし、今はどうでしょうか。情報共有の出来るITツールがあるため、管理と伝達の役割を分離することが可能なのではないでしょうか。

物理組織と論理組織

ここで、「物理組織」と「論理組織」という考え方をしてみることにします。

目に見える範囲、声の届く範囲という意味で、物理組織という言葉を使います。

仮に物理組織を階層型の組織だと仮定します。階層型の組織であれば、組織の5原則に従った運用がしやすくなります。一人の所属長が目の届く範囲で管理するということで、現場の統制・統率も容易です。

一方で、仮想的な論理組織としてフラットなデザインを設計し、情報伝達を論理組織で賄うということにすれば、そちらはITツールを使うことで実現出来ます。

発電と送電事業者を分離する「発送電分離」のように、管理・統制と情報伝達の役割を分離するという考えです。

稟議や労務・人事等の手続に関しては、物理組織に従います。これは「現場を統制・統率する役割」の範疇だからです。しかし、情報伝達については、必ずしも物理組織に従がわなくてもよいのです。物理組織を無視したフラットなデザインにしてもよいでしょう。

考え方として重要なのは、ITツールがなかった昔のように、物理組織が「情報伝達の役割も担わなければならない」という暗黙の前提に従う必要はないということです。情報伝達はITツールを使った仮想的な論理組織で賄えばよいのです。

逆に、「情報伝達のためにフラットな組織構造にする必要がある」といっても、組織の5原則を崩して物理組織までもフラットにする必要はないのです。しばしば「フラットな組織デザインにすることでの管理職不要論」といった話も耳にしますが、これでは「統制範囲(スパンオブコントロール)の原則」が崩れてしまうため、機能不全に陥る可能性もあります。

フラットな組織が必要であれば、論理組織としてフラット型の組織構成を採用すればよいのです。

ただし、階層は出来るだけ少ない方がよい

物理組織をデザインする上で重要なのは、現場の統制・統率機能です。したがって、部下なし管理職といった統制をしない存在は基本的に無意味です(ポストを作るためという事情もあるかもしれませんが)。その意味において、管理職不要論には部分的に賛成します。不用意にポスト・階層を無駄に増やすことは、責任権限一致の原則や命令一元化の原則が崩れる可能性があるからです。

そういう訳で、組織の5原則に一つ付け加えてよいとしたら、「6.階層最小化の原則」を加えたいと思っています。

情報共有の上手な組織は論理組織が機能している

物理組織や論理組織という小難しいことを書きましたが、要は「ネット上(論理組織)では職位・部門の垣根を越えてフラットにやろう」ということに尽きます。

情報共有が上手くいっている組織は、階層型の物理組織の垣根を超えたフラットな論理組織が上手く機能していると言えます。

情報共有においては、各スタッフに物理組織に縛られない論理組織をどう意識させるか、も成否のカギを握ります。

フラットな論理組織で流通させるべき情報

論理組織には情報伝達の役割を担わせるべきと書きましたが、どのような情報伝達を担わせればよいのでしょうか。

ひとつは、上から下へ伝える情報です。組織のビジョンや戦略、業績や目標といった情報です。注意点としては、直接的な業務命令は階層型の物理組織を通して行わなければならないということです。

もう一つは、下から上へ伝える情報です。部門を超えた改善要望や内部通報などが当たるでしょうか。

さらにもう一つは、横へ伝える情報です。例えば、他部門の商品やサービスに関する感想や、部門を跨ぐ同一顧客の情報共有などになります。

これらは、「現場の統制」には直接的に関わってこない情報ですので、論理組織で流通させるべき情報と言えます。例に挙げたもの以外にも、組織によって色々あると思います。

論理組織であれば、物理組織の縛りにとらわれず、縦横斜め情報を発信・共有出来るのです。していいのです。この「していい」ということを共通認識とするのも重要です。

経営幹部は積極的に情報発信を行うべき

組織において、経営幹部はスタッフから「遠い存在」であってはいけません。スタッフは何を考えているか分からない経営陣よりも、普段から情報発信をしていて想いを共有出来る経営陣についていきたいと思うはずです。物理組織に縛られていると、ビジョンの伝達は伝言ゲームになってしまいます。伝言は回数を重ねるごとにニュアンスがズレたり、熱量が失われたりします。その上時間も掛かります。

しかし、ITツールを用いた論理組織においては、ダイレクトにそれが伝えることが可能です。

論理組織においては、年に1回の全体ミーティングのような場でのみビジョンを伝達するという非効率的なことをしなくてもよいのです。

普段から情報発信をしていると、人となりも伝わりますし、そうなれば下からの情報も集まりやすくなります。情報は発信している人の所に集まります。そして、それがロールモデルとなれば、追随する者も出て来るでしょう。「やって見せ、言って聞かせて、させてみて…」という山本五十六の言葉にもあるように、まずはやって見せることが人(スタッフ)を動かすことにも繋がっていきます。

まとめ

組織の重要な役割として、「現場の統制・統率」「情報の伝達」というものがありますが、それは、ITツールの導入により、発送電分離のように、「物理組織」と「論理組織」それぞれに担わせることが出来ます。

物理組織は、組織の5原則(勝手に6原則目を追加しましたが)に従い、階層型組織を採用する方が望ましいですが、バーチャルな論理組織はフラットにデザインして構いません。

そして、論理組織を構成するのは、社内SNSやコラボレーションツールなどの情報共有ツールとなります。

物理組織が存在すると、どうしても部門を超える、職位を超えるといったことに抵抗を感じてしまいますが、論理組織に関してはその限りではないということを明示することも重要です。

情報共有が上手くいっている組織は、この論理組織が活発に機能していると言えるでしょう。

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