情報共有のファーストステップ 「情報の属性」を整理する
「報連相が薄い」「顧客情報が共有されず、対応が属人化してしまう」「クレーム情報が共有されない」といった背景から、情報共有が重要だという声をよく聞きます。
多分、「情報共有が重要でない」という方はまず居ないでしょう。賛否が出るのは、そのやり方・アプローチ方法や、コスト等の面だと思います。
そして、アプローチ方法には正解がありません。成功事例は多くありますが、それを鵜呑みに自組織に適用しようとしても上手くいかないことが多いです。自組織への適用は自組織の現状を鑑みて個別に検討する必要があります。
今回は、その情報共有のアプローチの前に、そもそも共有すべき情報とは何なのかを整理してみたいと思います。
具体的な話というよりは、メタ的・概念的な内容となります。
ただ、具体的な施策に落とし込んでいくには、概念的な整理があった方がスムーズに進むでしょうし、情報共有の成功率も上がると考えます。
先に情報共有のツールを選定したりするのも良いですが、一旦それは我慢します。遠回りになるかも知れませんが、長い目で見ればメタ的なアプローチから始めるのが最短コースであると考えています。
この記事の目次
「情報の属性」を考える
まずは、情報の属性というものを考えてみましょう。
一言で情報といっても、保存方法や各要件を細分化すると、いくつかの属性に分けることが出来ます。
共有しようとしている情報が以下のどれに該当するのかを整理することは、情報共有を成功に導くための最初のステップとなります。
これらを整理せずに、または意識せずに「とにかく共有」しようとしてしまうと、色々ゴチャゴチャになって情報共有が上手く進まなくなる原因となります。
1.デジタルかどうか
まずは、情報がデジタルデータかどうか、です。FAXや手書きの伝票なども重要な情報ですが、残念ながら紙のままだと共有には向きません。共有すべき情報が紙の場合、積極的にデジタル化(デジタライゼーション)を進めることが第一歩となります。
何故デジタライゼーションが必要かについては、下記をご覧ください。
2.定量的情報と定性的情報
次は、定量的か定性的か、です。
具体的には、伝票データのように、数字や正規化された科目のみで構成される情報は、定量的と考えてよいです。一方、報告書のように自由に記入出来るテキストデータなどは定性的データとして扱います。動画なども量化しにくいので、定性データとして扱います。
要はデータベース化出来ないもの(しにくいもの)、集約出来ないもの、四則演算出来ないものは全て定性的データとして扱ってよいです。
なお、エクセルのファイルのように、中身には定量的データが入っているが、ファイル名は定性的というようなややこしい場合もありますが、そういう場合はケースバイケースで判断します。
共有しようとしている情報が、定量的なのか、定性的なのかによって、フォローするのに適したツールが変わってきます。
定量的データは、データベースシステムで管理する、定性的データは共有フォルダやグループウェア、検索エンジン等でフォローする、といった対応を検討すべきでしょう。
3.ストックかフローか
ストックかフローか、という視点も重要です。
蓄積されて参照・再利用されていく情報(ストック)なのか、ニュースのように賞味期限の短い情報(フロー)なのか、ということです。ストックかフローかで選択すべき道具も変わってきます。
業務マニュアルなどは間違いなくストック型になりますし、ちょっとした報告などはフローとしてよいでしょう。
ストック型のデータをフォローするには、データベースシステムやwikiのようなナレッジ蓄積ツール、フロー型の情報をフォローするには、SNSなどがあります。
4.公開範囲
次は公開範囲です。社内(組織内)限定の情報もあれば、ネット上に公開する情報もあるでしょう。
この情報の公開範囲も意識する必要があります。
社内に限定された情報であれば、グループウェアや社内SNS、社内wikiなどが適しているでしょうし、社外の方も含むけれども非公開の情報であれば、社外の人も使えるコラボレーションツールが適しているでしょう。
一般公開して共有したい情報であれば、普通のSNSやWEBサイトなどを選択します。
5.プッシュ型・プル型
次はプッシュ型、プル型の情報です。
プッシュ型というのは、「相手に能動的に通知すべき情報」です。ちなみに、電話は、相手の都合お構いなしにコールして自分の要件を伝えるという究極のプッシュ型ツールです。
逆にプル型というのは、「その情報を必要とする人が取りに来る」という受動的に置いておく情報を指します。
何でもかんでもプッシュしてしまうと鬱陶しいですし、逆に「今日休みます」といったプッシュすべき情報をプル型で配信してしまうとコミュニケーションエラーが起きてしまいます。
ストック型の情報はプル型にするケースが多いですし、フロー型の情報はプッシュすることが多いようにも思えます。
6.関連度
情報と必要とする方の関連度です。1対1なのか、1対多なのか、多対多なのか、1対不特定多数なのか…という組み合わせになります。
1対1であれば、電話や、LINEなどのメッセンジャーが適しているでしょうし、多対多なら掲示板などが適しているでしょう。
情報の属性に合ったツールを適切に選択すること
以上、情報の属性を並べてみました。一言で「情報」と言っても、それが持つ「属性」は沢山あります。ここに挙げたもの以外にもあると思います。
いずれにしましても、「情報の属性を見極めて適切なツールを選択すること」が情報共有の始めの一歩として重要な視点になります。
情報共有に適したツールは沢山あります。例えばLINEなどのメッセンジャツールなどもありますが、これは、
- 定性的
- フロー型
- 非公開
- プッシュ型
- 1対1、または1対多
というタイプの情報共有に適しています。例えば、上司に「懸案だった〇〇の件、成約しました!」といった閉じた関係でフローの情報をプッシュで伝える、といった用途には適していると言えます。
一方で、ストック型の情報をメッセンジャツールで共有しようとすれば、「後から検索出来ない」「宛先に居ない人には伝わらない」などの理由により、途端に共有しづらくなります。共有しづらくなると、使われなくなりがちです。
このように、情報の属性によって、利用すべきツールは適切に選択しなければなりません。
「とりあえずチャットワークで」という場合であっても、情報の属性を知っておくことで「チャットワークはフローには向いてるけど、ストックにはあまり向かない。じゃあストック型の情報はどうする?」という対応が出来るようになります。
定量的でストック型の情報を蓄積して共有するにはkintoneのようなWEBデータベースサービスが適していますし、定性的でストック型の情報を共有するには社内wikiのようなツールが適していますので、フローはチャットワーク、ストックはkintoneと社内wikiで、という使い分けが出来ます。
情報共有に利用できるツールやサービスは沢山あります。沢山あるので、迷う方も多いと思いますが、共有しようとしている情報の属性を見極めれば、自ずと選択肢は絞られていくと思います。
ただし、現時点で私が知る限りでは、「全ての属性をカバー出来るツール・サービス」というのはありませんが、比較的守備範囲が広いのはOffice365だと思います。
現実解としては、メールやスマホアプリ、クラウドサービスなど、複数のサービスを組み合わせて利用するのがよいと思います。
また、可能であれば、「情報の属性」という概念をメンバで共有することも重要です。
そうしないと、「ストック型の情報をメールで配信し続ける人」や「定性的データをエクセルで管理しようとする人」などが出て来てしまい、情報共有が上手く進みにくくなります。ソフト面の手当です。
まとめ
情報の属性に関して、私が「本能的に何となく意識していること」を言語化してみました。
今回は概念的な内容になりましたが、「情報共有を推進する立場の人」は知っておいて損はないのではないでしょうか。
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