情報共有の活性化のための5つのアプロ―チ

情報共有が活性化しない、という悩みは多くの組織にあるのではないでしょうか。

ツールは整えた、使い方の教育もした、それでしばらく使ってみたけど、閑古鳥が鳴いている。本やネットで読んだ事例のように全く活性化しない。何故だ。という声はしばしば聞きます。

残念ながらその原因は分かりません。組織の事情によってそれは様々だからです。

「表面上は普通だけど、実は皆めちゃくちゃ仲が悪い」とか根深い事情もあるかもしれませんし、単に「ツールが使いにくいだけ」という軽めの原因などもあるでしょう。

ただ、この辺はチェックしてやっておいた方がよい、というポイントがいくつかありますので、今回はそれらを紹介します。

情報共有の活性化のための5つのポイント

情報共有が活性化しない原因は、組織によって十人十色ですので、対応の処方箋はそれぞれ異なるものになるでしょう。ただ、これだけはやっておきましょうという共通のポイントを以下で述べます。

1.「何故やるのか」を共有する、共感してもらう

そもそもの話、何故情報共有をするのかという理由、目的を共有するというのが最初のステップになります。ここでのポイントは、単に「明日から情報共有進めるから」と通知するのではなく、共感してもらう、というところまで踏み込むことが大切です。

情報共有と言えば、ネガティブなイメージを持つスタッフも出て来ます。

「いままでのやり方でいい」「今更何を言ってるのか」「めんどくさい」「監視されているみたいだ」という声は実際耳にしたことがあります。

そういう方々に対して「情報共有することで、属人性を排除したり、時間を短縮出来たり、スタッフ同士の協業などもして生産性向上が見込めるよ」といった教科書的なことを説明してもはっきり言って共感は得られません。なぜならそれらは経営者の目線だからです。多くのスタッフには響かないこともあるでしょう。

そういう場合は、ひとつの方法として、「何なら共感出来るのか?」というところまで踏み込んでみましょう。

例えば、「残業したくない」という価値観の方が多いのなら「残業しなくて済むように情報共有をすすめる」ということを打ち出す、といった具合です(生活残業したい方が多いのなら逆効果になりますが)。

そのように「自分のこと」に置き換えられたことなら共感出来るはずです。情報共有の本来の目的である「生産性の向上」を噛み砕いて、個別のテーマに置き換えていくというやり方です。

個別の目的なら反対する声は出にくくなりますし、納得性も高まるでしょう。

要は「現場目線」で話を進め、「腹落ちさせる」ということが重要であるということです。

2.自分の利益にもなることを示す

もう一つ重要なのは、情報共有は自分の利益にもなるということです。

マクロな話としては、「情報共有を進める→生産性の向上→組織の売上・利益の向上→自分の給料アップ」というシナリオが描けるでしょう。

ミクロな話としては、

  • FAQを作って公開すれば、自分への問い合わせ回数が減り、仕事が中断されなくなる
  • 業務TIPSをまとめ、全スタッフの生産性向上に貢献することで自身のプレゼンスが向上する
  • 日報をオンラインで完結するようにすれば、帰社しなくても業務を終えられる

といったような話が考えられます。

いずれにしても、情報共有は組織の利益でもあると同時に、自身の利益にも繋がるということを明示しましょう。ここを勘違いしている方は結構多いです。「どうせ監視するためにやるのだ」「俺達には何の利益もない」という残念な理解で終わってしまわないようにしましょう。

「組織の利益は巡り巡って自分の利益にも繋がる」ということを理解してもらいましょう。

情けは人のためならず、です。

3.オフラインコミュニケーションの実施

情報共有は基本的にITツールを使ったオンラインコミュニケーションがベースとなります。一方で、それは対面でのオフラインコミュニケーションを否定するものであってはなりません。

以前、「ネットでの連絡は血が通ってない感じがしてイヤだ」という声を実際に聞いたことがありますが、このようにオンラインコミュニケーションに一種の「冷たさ」を感じる人は少なからずいるでしょう。

感覚としては理解できますが、それは、オンラインとオフラインを一種の対立構造として捉えているようにも感じられます。しかし、決してそうではありません。オンラインもオフラインも等しく相手の居る「リアルなコミュニケーション」です。お互いに一長一短のあるコミュニケーション方法ですので、そこを補いあうことが重要になります。

情報共有を推進する時点においてもそうです。

オフラインでのトレーニングの実施、慣れない方には対面や電話サポートを行う、といったいわば弱者を切り捨てない対応が必要になります。オンラインでのサポートは基本的に自助努力の世界です。ただ、それだけだと、ついてこれない人も中にはいるため、オフラインでのサポートも重要です。弱者を切り捨ててしまうと全体的な共感は得られにくくなる場合があります。

4.適切なツールの導入

ツールは整えたと言っても、本当に適切なツールが導入されているかは別問題です。共有すべき情報とツールがミスマッチとなっている場合もあります。

「情報共有を促進しよう」と号令を掛けたものの、そのツールとしてメールしか用意されてなかったとなると、情報共有は上手く進みません。

組織内に流通するストック情報やフロー情報を上手くフォローするツールの導入が必須となります。

グループウェア、ファイル共有サービス、WEBデータベースサービス、社内SNSなど、利用できるツールは多種多様です。自組織の要件に合ったものがキチンと選択されているかを今一度確認しましょう。

5.インセンティブの付与

インセンティブの付与については、賛否があるかと思われますが、私は賛成です。

というのも、基本的に情報共有は「提供者負担」となります。義務付けられた報告書などは別として、それ以外のノウハウなどについては、言語化したり、まとめたりするのは非常に骨の折れる作業です。

例えば3分で読み終わるブログの記事でも、書くのに数時間費やしたりします。ブログであれば好きでやってるので構いませんが、「暗黙的に皆がやっていることをマニュアル化してみた」「多くの人が引っかかる質問の多い業務手順をFAQ化してみた」ということを、プラスアルファの努力でやるかと言えば、多くの人はやりたがりません。書くという実作業より、まとまった時間で考えるという作業が多く、それが負担になるからです。

「それも仕事の内」というのも一理ありますが、大体において、忙しい人程ノウハウを持っているものです。

それを引き出すためにも、プラスアルファの努力についてはきちんと評価し、対価を与えることで、正の循環を作り出すことが重要になります。

具体的な例で言えば、社内SNSで「いいね」や「ありがとう」が多くもらえた人の査定をアップするなどの対応も考えられます。

まとめ

情報共有を活性化させるための5つのポイントを紹介しました。

  1. 「何故やるのか」を共有する、共感してもらう
  2. 自分の利益にもなることを示す
  3. オフラインコミュニケーションの実施
  4. 適切なツールの導入
  5. インセンティブの付与

どちらかと言えば、4以外は工夫による対応となります。私は、デジタルなツールの活用を推進する立場ではありますが、アナログなアプローチも極めて重要と考えています。この辺はよく誤解されます。

デジタルなツールを使い倒すのも結局は人間ですので、個人個人のモチベーションや、ITツールと仲良くしてもらう工夫も必要だと思います。

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