SECIモデルで考える情報共有の最適化

ナレッジマネジメントでSECIモデルという概念があります。一橋大学の野中郁次郎教授らによって25年ほど前に提唱されたナレッジマネジメントのフレームワークの一つですが、非常に分かりやすいので、よく参考にしています。

SECIモデルとは?

SECIモデル(セキモデル)の概念図は、左記のようになります。

スタート地点を図の左上としてみます。

そもそものノウハウというのは、個人に属する言語化しにくい暗黙知です。職人が身に着けているコツだったり、業務を早く終わらせるためのTIPS、業績のよい営業マンが無意識にやっていること、などがそれにあたります。それらをOJTや「背中で教える」「盗む」といったことを通じて、他者に伝えていくことで暗黙知が共有されていきます(共同化)。

共同化された暗黙知は、マニュアルや手引き、動画などで言語化・イメージ化され形式知としてさらに他者と共有されていきます(表出化)。

そのようにして言語化・イメージ化された形式知は、他の形式知と組み合わされるなどして、新たな形式知の創出につながっていきます(結合化)。

新たに創出された形式知は利用されることでまた個人に属するノウハウ=暗黙知となっていきます(内面化)。内面化された暗黙知はまた共同化され…という風に循環していきます。

SECIモデルは以上のようなスパイラルを描きます。感覚的にも「なるほどな」と頷けるのではないでしょうか。

このスパイラルが繰り返されれば繰り返されるほど、組織として活用できるノウハウ(ナレッジ)が蓄積していくことになります。

ナレッジマネジメントとITは親和性が高い

SECIモデルの「共同化」「表出化」「結合化」の部分は、「他者との情報共有」というフェーズになります。これらのフェーズは、ITツールと非常に親和性の高いものとなります。というのも、共有するというのは、ITツール(電子データ)の持つメリットをダイレクトに活かせる行為だからです。

むしろ、情報共有においてITツールを使う際には、これらの「共同化」「表出化」「結合化」というフェーズにITツールを適用するものだと考えるのがスマートかもしれません。

フローとストックの情報のカバーによる最適化

別のエントリーで「フローとストック情報」という言葉を紹介しました。

SECIモデルにおいても、この「フローとストック」の考え方に注目して情報共有のあり方をデザインすることは重要です。

SECIモデルのどこかのフェーズが何らかの理由で実現出来ないとなれば、スパイラルはそこで止まり、ナレッジは蓄積されなくなってしまいます。

スパイラルを正常に回してナレッジを蓄積していくためには、単に放置しておくのはダメで、それぞれのフェーズに対し、適切なITツール等を利用してカバーすることが大切なのです。

共同化はフローの情報として対応する

暗黙知の共同化というフェーズは、言ってみれば非言語的体験と言えます。「背中を見て覚える」「先輩から盗む」というのは、言葉で漏れなく伝えられるものではありません。その人の価値観、仕事への意識、立ち回り方法など、あまり言語化されない情報を総合的に見る必要があるからです。

ということは、それらを言葉で伝えるのは不可能なのでしょうか?

私は必ずしもそうではないと考えます。

価値観や仕事への意識、立ち回り方については、フローの情報としてITツールで共有出来ると思っています。例えば社内SNSで呟くことは、それらをそれとなく表明することにも繋がります。

「行間を読む」といった話になりますが、一つ一つの情報発信を個別に見ても単なる情報でしかありません。しかし、発信された情報が集まれば、人となりや価値観が伝わっていくでしょう。

個別の発信情報は言語化されたものではありますが、それらを総合的に見ることで、非言語的情報を読み取ることが可能だという話です。

共同化のプロセスの本質は、非言語的情報の読み取りにある訳ですが、フローの情報をカバーするITツールでもそれは可能だと考えます。

デジタル情報でありながら、それ以上のことを伝えられる可能性があるのがフローの情報となります。

そしてフローの情報をカバー出来るのが、社内SNSやコラボレーションウェアというITツールになります。これらのツールのメリットは、一対一の関係で完結するものではなく、一対多においても成立するという点です。進化した共同化とも言えます。

もちろんこれらを使って共同化を進めていくには、個々人の活発な情報発信があることが前提となります。発信する情報は雑談でも構いません。そもそも「行」がなければ「行間を読む」ということは出来ません。それが積み重なることで共同化が進められていくのです。

私がクライアントの組織に「スタッフ同士の雑談」を勧める理由はこの点になります。

余談ですが、「私語は生産性を下げる要因であるため禁止している」という組織を見たことがありますが、かなり息苦しかったです。それでは個々人のノウハウがタコツボ化し、共同化が全く進みません。

表出化はストックの情報として対応する

次に、表出化についてです。こちらは暗黙知が言語化されていくことで形式知化していくというフェーズです。

形式知の代表的な例は、「マニュアル」です。

マニュアルは、版を変えながらも脈々と利用されていくもので、ストック型の情報と言えるでしょう。

では、こういったストック情報をカバーするにはどういったITツールが適しているでしょうか。

それには、情報を共有するためのファイル共有サービスや、掲示板、wiki(≠wikipedia)、データベースなどが挙げられます。これらのツールを上手く活用することで、形式知はカバーされていきます。

ただし、これらのツールは使いやすくなければなりません。

複雑なマークアップの必要なwikiなどは、技術者であれば苦になりませんが、そうでないユーザにとってはハードルが上がります。

なるべく簡便に、直感的に情報を蓄積出来るツールが望ましいでしょう。

クラウド型ファイル共有サービスは、共有するということをあまり意識しなくても使えますし、使いやすいインタフェースのグループウェアサービスも沢山あります。

結合化はフローとストックの両面で対応する

結合化は、形式知同士の結合による新たな形式知の創出というフェーズです。

従来の形式知をストックとして蓄積しておくのが前提なのは言うまでもありませんが、それらを結合させうるのは、共同化でも登場したフローの情報です。

形式知は、形式知となることでフローの中で共有され、より多くの人の目に触れられます。そして多くの目に触れられることで、新たな知見の創出に繋がっていくでしょう。

社内SNSで共有された形式知は、他者の目に触れ、ブラッシュアップされていきます。

そうして出来た新たな知見は、新たなストックとして組織内で再び共有されていきます。

活発な情報発信(フロー)と、分かりやすい蓄積の場(ストック)、両方を用意することで、SECIモデルのスパイラルを回していくというイメージになります。

まとめ

SECIモデルの解説から、ITツールによるスパイラルのフォローまで解説し、次にSECIモデルのそれぞれのフェーズにおいて必要なアプローチも述べました。

フローの情報とストックの情報をITツールを上手く活用することでカバーし、SECIモデルのスパイラルを回していく、止めないことが重要になります。

闇雲にツールを導入しても、スパイラルは最適化されません。一般ユーザまでSECIモデルを意識する必要はありませんが、情報共有をデザインする立場の方は、どのフェーズで何を適用するのかを明確に意識しましょう。

もしSECIモデルでの情報共有が上手くいかない場合は、スパイラルがどこかのフェーズで止まっているはずです。止まっている箇所を見つけ出したら、意識付けやツールの導入などで改善していけばよいのです。

具体的なツール名、サービス名についてはここでは述べませんでしたが、以上を踏まえながら、かつ組織ごとの個別の事情(要件、予算、組織のリテラシ…)を鑑みれば、自ずと選択肢は絞られていくと思います。

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