情報共有で無料ツールを使ってはいけない理由

よく業務連絡に無料のコミュニケーションツールを使っている組織を見かけます。

具体的なサービスを申し上げると、LINEやFacebookメッセンジャーなどです。

プライベートで日常的に使っていて、便利なのは理解出来るのですが、組織活動で無料のコンシューマ向けサービスを使うことについては、異論があります。

是非を問われれば「非」と答えるでしょう。

このエントリーでは、その理由を書いていきます。

無料ツールを使わない方がよい理由

基本的に、物事は上手く回っていれば問題が顕在化しないものです。

それは組織で無料ツールを使うことにも当てはまります。

上手く回っていれば問題ないのですが、それは、いざ問題が出ると対処しにくいという脆弱な状態でもあります。それは言ってみれば任意保険に入っていない自動車のようなもので、危険を内包しています。

組織としてそのような状態を放置したまま運用するのはよくありません。

ここでは、どのような問題があるか、いくつか述べていきます。

1.仕事とプライベートの分離問題

まず、最大の理由が仕事とプライベートの分離です。

LINEや、FacebookなどのSNSを「仕事でしか使っていない」という方には当てはまりませんが、多くの方はプライベートの用途で使っていると思います。私個人の話で言えば、家族や友達とのやり取りにはLINEは欠かせません。

そのプライベート用途の中に、業務上の繋がりが入り込んでくるのは、心理的な負担になる場合があります。

「別に仕事の繋がりとプライベートの繋がりが混在しても構わないよ」という人もいるでしょう。しかし、「仕事とプライベートは分けたい人」も中にはいます。

そして、後者の方が声を上げにくいものです。

こういう場合は、後者の「一理ある方」に合わせた運用をするのが鉄則です。自動車でいう「かもしれない運転」と考え方は同じです。

「仕事とプライベートの分離」は結論の出ない価値観の話になりがちです。「仕事が充実すればプライベートも充実する」という考え方もあれば、逆に「プライベートが充実しないと仕事でパフォーマンスが出ない」という考え方もあります。どちらが正しいか、とは一概に言えません。結論は出ません。

であれば、多様な価値観を許容するポリシーにするのが良いだろうということになります。

以前、「仕事もプライベートもない!社員の面倒は俺が全部見る!」と強弁する経営者の話を聞いたことがありますが、何故社員の定着率が悪いのか振り返るべきでしょう。

2.退職者の扱い

「仕事とプライベートの分離」にも関わってきますが、退職者の扱いも微妙な問題となります。

退職後もプライベートで繋がっていればよいのですが、そうではない場合もあると思います。

その場合、何となく気まずくなります。

何となく気まずいだけならまだマシですが、もし「グループからの消し忘れ」のようなことがあれば、次に述べるセキュリティ上のリスクにもなりえます。

3.セキュリティ上のリスク

また、情報漏洩のリスクもあります。無料ツールを使う組織は、BYOD(※)的に端末を利用しているケースも多いと思いますが、端末紛失時には情報漏洩に繋がるかもしれません。

有料ツールを使っていれば、管理者側から一時的にログイン出来なくするといった対応も可能ですが、個人のアカウントで運用している場合、管理者側からの集中管理が及ばなくなるというセキュリティ上のリスクがあります。

※BYODについては下記を参照してください。

4.管理者・責任者の不在

業務で利用するツールは、「誰が管理しているのか」も重要なポイントになります。

何となくLINEやFacebookで作ったグループを運用しているけれども、メンバーの追加や削除は気づいた人がこれまた何となくやっている、という状態では、運用としては極めて不安定です。

またセキュリティインシデントが起きた場合には、誰に問い合わせればいいのかも分かりません。

そういう場合、迅速な対応が出来ず、後手に回ってしまいます。

管理者・責任者を設置することで、公式ツールとして運用することが大切です。

5.サービスの継続性・仕様変更等

無料ツールの場合、サービスの継続性や突然の仕様変更などに注意しなければなりません。尤も有料ツールでも注意しなければなりませんが、無料ツールだと特に気を付けるべきでしょう。

最近の例だと、無料グループウェアサービスの「サイボウズLive」がサービス終了して移行先に苦慮された方もいるかと思います。

サイボウズライブの場合、サービス終了まで十分な移行期間を設けられたので良かったですが、無料サービスだといつサービスが終了しても文句は言えません。

その他気を付けなければならないこと

これは無料ツールでも有料ツールでも同じことなのですが、労務管理には細心の注意を払うべきでしょう。

「いつでも繋がる」ということは「いつでも仕事する」ということと意味が異なります。特にLINEなどはプライベートツールであるが故に、メッセージを送る心理的なハードルが下がりがちです。

業務時間外や休日に「急ぐから」と言って業務上の連絡をしてしまうこともあるかと思いますが、それはどうしてもやむを得ない場合に限り、我慢しましょう。

「忙しいアピール」をする人程、大したことのない用件で「緊急連絡」をしがちですが、無駄な連絡が多いと人は離れていきます。

まとめ

結論としては、たとえ費用が発生しても、組織専用のITツールの導入を検討すべきです。

LINEやFacebook、Twitterによく似たインタフェースのツールもありますし、利用料金も比較的安価なサービスも多いです。

「とりあえず無料で使えるから」というのは、大事なポイントではありますが、無料ツールで上手く行きそうな感触があれば、次のステップとして、様々なリスクを回避するために有料ツールの利用も検討してみて下さい。

業務上の要件、予算等様々ですので、一概には「これが良い」とは言えませんが、例えば、TeamsやYammerの使えるOffice365や、手軽なメッセンジャーツールとして使えるワウトークなどもよいでしょう。

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