デジタルトランスフォーメーション(DX)とリエンジニアリング
デジタルトランスフォーメーションという言葉をご存じでしょうか?
昨年あたりからIT系のニュースサイトなどで取り上げられることも多くなってきたキーワードですが、今回はそれについて解説してみます。
この記事の目次
デジタルトランスフォーメーションとは?
「デジタルトランスフォーメーション」とは、「ITの浸透が、人々の生活をあらゆる面でより良い方向に変化させる」という、スウェーデンの大学教授が提唱した概念です。「DX」と略される場合もあります。
※「Trans」を「X」と略す場合があるため、「DT」ではなく、「DX」という略し方になったようです。
上記の絵は平成30年度の情報通信白書からの抜粋ですが、ポイントとしては、これまで「リアル(現実世界)」と「ネット(サイバー空間)」は概念として切り離されていましたが、DXによってシームレスにつながる・一体化する、というものです。
例えば、AmazonEchoのような機器を使えば、サービスを利用するのにいちいち「スマホやPCを起動して何らかのアクションを起こす」といったことが必要なくなり、日常生活を劇的に変化させるものとなります。
これまで線を引かれていた「リアルとネット」の境界が曖昧になります。
AmazonEchoは日常生活におけるDXの例ですが、今回はビジネス・組織におけるDXについて解説していきます。
デジタライゼーションとデジタルトランスフォーメーションの違い
DXと似たような言葉に、「デジタライゼーション」というものがありますが、DXはそれとは若干意味が異なる概念です。
デジタライゼーションがその名の通り「(単純な)IT化」という意味に用いられるのに対し、DXは情報、情報システムとの付き合い方もひっくるめて変革するという意味になります。
分かりやすい例で言えば、会議の資料を紙で配布していたものを一切やめて、iPadのような端末で閲覧できるようにする、というのが、デジタライゼーションです。単純に紙の書類をPDFファイルなどの電子データに置き換えるようなケースです。
それにとどまらず、さらに使い方を進化させて、iPadを使って場所を選ばず会議できるようにする、一方通行の情報共有的な会議であれば動画配信で済ませる、そもそも会議を無くしてオンラインの意見交換で済ませる、といった劇的な変革を伴うものがDXになります。
そういう意味で、DXのはじめの一歩はデジタライゼーションになりますので、デジタライゼーションは、DXに包含されるようなイメージとなります。
ただ、ビジネスニュースなどを見ていると、「単なるクラウド化」をDXと呼んだりしているケースも散見されますので、まだまだ概念として定着するのは時間が掛かるような気がしています。
ビジネスにおけるデジタルトランスフォーメーションのステップ
ビジネスにおけるDXは、業務の在り方を抜本的に変えるものです。下記のサイトにDXの導入ステップを、
- デジタル化
- 効率化
- 共通化
- 組織化
- 最適化
というように順を追って分かりやすく解説されていたので紹介します。
上記サイトでは、DXの例として配車マッチングサービスの「Uber(ウーバー)」を挙げていますが、DXはUberのようなCtoC、BtoCの業態だけでなく、BtoBの業態にも適用できるものと考えます。
以下は、各ステップの説明に関しての引用になります。
Step1の「デジタル化」は、デジタルテクノロジーの導入期にあたります。さまざまなツールがデジタル化され、データがどんどん蓄積されていきます。先ほどのUberの例でいえば、従来は配車係がタクシーの空車を把握していたものが、アプリやクラウドによってデータ化されたことにあたります。
Step2の「効率化」は、蓄積されたデータを部門ごとに活用するようになる段階です。部門単位で運用ルールが定められており、施策実施にデータを活用していきます。今の日本企業の多くは、この段階にあるといえるでしょう。Uberの例でいえば、データ化された空車情報を用いてユーザーとのマッチングを行なうサービスがこの段階にあたります。
Step3の「共通化」は、部門をまたいでデータを活用するための基盤を構築していく段階です。全社的な共通のKPI(評価項目)が設定され、仮説→施策実施→データで検証する、というサイクルを回していきます。部門間で活用していくということから、Uberの例でいえば、配車システムを外食宅配に応用した「Uber Eats」などがこの段階にあたります。
Step4の「組織化」は、Step3で構築した基盤を活用して効率的な運用を行なうための組織づくりを行なう段階です。運用体制を確立し、業務フローを明確化することを目指します。デジタル専任組織が設立され、積極的なデータの活用、データによる仮説作りが行なわれます。Uberのような一部の先進的な企業については、この段階を進めている状況といえるでしょう。
そしてStep5の「最適化」は、デジタルテクノロジーの活用によって事業にイノベーションを起こすような段階となります。データからのインプットを元に施策を実施し、データを活用した事業の未来予測を行ないます。データなどデジタル資産は事業の基盤となり、その活用が競争力の向上につながります。今後は、この段階を目指し、様々な企業がデジタルトランスフォーメーションを進めていくことになります。
このように、DXはSTEP1の「デジタライゼーション」から始まり、最終的には組織としての競争力の源泉そのものとなるように育てていくようなシナリオを描かねばなりません。
ただ実態として、多くの組織では、STEP1のデジタル化(デジタライゼーション)か、STEP2の効率化で止まっているような印象を受けます。
ビジネスにおけるDXとリエンジニアリング
以前紹介したリエンジニアリングとビジネスにおけるDXには共通点があると考えています。
リエンジニアリングは古い概念ですが、DXという新しい概念が提唱されたことで、再びスポットを当ててみたいと思います。
リエンジニアリングの定義をおさらいすると、「コスト、品質、サービス、スピードのような、重大で現代的なパフォーマンス基準を劇的に改善するために、ビジネス・プロセスを根本的に考え直し、抜本的にそれをデザインしなおすこと」というものであります。
現代において、リエンジニアリングを推進するためには「IT・情報技術」の活用は不可欠です。
顧客の体験を劇的に変えるものは、冒頭で述べたAmazonEchoのような直接的なサービスや機器だけとは限りません。
例えば、組織内部の業務フローや、情報システムの仕組みを見直すことで、従来1時間かかっていた顧客からの問い合わせ対応を5分に短縮することが出来れば、サービス品質の大幅な向上となります。
また、従来1週間かかっていた資料作成業務が1日で終わらすことが出来るようになれば、そこに費やしていたリソースを他の業務に振り分けられるかもしれません。さらに残業の抑制により、社員のワークライフバランスを改善することも可能かもしれません。いわゆる働き方の改革にも通じるものにもなり、社員のモチベーションの向上などの効果も得られるでしょう。
これら、顧客体験、社員体験の抜本的な変革をもたらすのが、組織活動におけるDXであり、リエンジニアリングと言えます。
最終目標は業務やサービスの最適化ではありますが、いずれにしましても、最初の取っ掛かりは、第一ステップの「デジタライゼーション」になります。
そして、組織がどの段階にあるかは、ケースバイケースです。
組織規模、人的リソース、予算など、様々な要因によって処方箋や着手すべき課題は異なるため、DXやデジタライゼーションに興味があっても、「どこから手を付けていいか分からない」となることも多々あります。
当事務所では、課題の整理、切り分けからサポートいたしますので、ご興味がある方はまずはお気軽にご相談ください。
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