サイボウズkintone(キントーン)の概要と業務への活用|向き・不向きなポイント
今回は、サイボウズkintoneの概要とそれを利用して基幹業務をまかなってみる話を書きます。
「業務の情報化(デジタライゼーション)を進めてみたい」という組織にとって参考になるかと思います。
この記事の目次
サイボウズkintone(キントーン)とは
まずはサイボウズkintoneについて簡単に説明いたします。サイボウズkintoneは、一言で言えば、クラウド型データベースシステムです。
基本的には、インターネットに接続されているパソコンとWEBブラウザがあればアクセス出来ますので、組織内の情報共有プラットフォームとして活用出来ます。
個人的には、ひと昔前のnotesに似ている部分があると感じています。
競合するサービスとしてはSalesforce.comやGoogleのG Suite、Google AppMaker、Microsoft PowerAppsなどが挙げられるかと思います。
利用料金について
利用料金は、JavaScriptでのカスタマイズが出来ないライトコースで780円(税抜)/月・1人、カスタマイズの出来るスタンダードコースで、1500円(税抜)/月・1人となります。
作成できるアプリ数もスタンダードコースで1000個と、実質無制限に近いので、使い倒せば使い倒すほどリーズナブルに思えるでしょう。
データのバックアップについて
クラウドサービスにおいて、よく心配されることの一つにデータのバックアップやサービスの継続性があります。
まずバックアップについてですが、4重のバックアアップ体制となっているようです(下記参照)。
また、それでも心配な場合、オフサイトでバックアップの取れるkBuckupというサービスもあります。
次にサービスの継続性ですが、これはサイボウズ社のさじ加減次第ということになります。ある日突然サービスを停止するといったことも無いとは言い切れません。ただし、サイボウズ社が一部上場企業であることや、kintoneユーザ数が1万社を超えていること、サイボウズ社自身もkintoneに力を入れていることなど、総合的に評価して、個人的には業務で利用するのも問題ないと考えています。
kintoneで出来ること・向いていること
kintoneの基本機能としては、入力・表示用の単票形式フォームの作成と、一覧画面になります。一つのデータベース(RDBでいうテーブルに相当)と、単票フォームがひとまとまりになったものを「アプリ」と呼びます。
関連レコード機能や、ルックアップ機能を利用すれば、あるアプリから別のアプリを参照するといった用途も可能です。
ユーザ主導でのアプリの作りこみ
kintoneの最大の特徴は、ドラッグアンドドロップによるフォームの作成で、簡単にアプリが構築出来てしまう点です。これは作業のハードルが非常に低く、普段パソコンでエクセルなどを利用しているユーザであれば、ノンプログラミングで基本的なアプリを作成出来てしまいます。
細かな制御をする場合は、JavaScriptによるカスタマイズが必要になる局面もありますが、単純なフォームであれば、誰でも作成可能です。いわゆるEUC的な使い方も可能です。
別エントリでEUCによる弊害に触れましたが、kintoneの場合、そもそもWEBで共有されたアプリのため、ブラックボックスになりにくいです。とはいえ、野良アプリにならないように、統制は必要と思われます。
JavaScriptによるカスタマイズ
ノンプログラミングでアプリを作成出来るのが強みと書きましたが、その一方で、どうしても標準機能だけだと要件と合わせられないケースも出て来ます。
そのような場合、JavaScriptを利用することで、柔軟な処理を実現することが出来ます。
特定のイベントで自動的にデータを更新したり、データ表示の表現を変えたりすることが出来ますが、ある程度kintoneのAPIとJavaScriptに精通していなければならないため、作業の難易度としては高くなります。
スタッフによる情報の共有
kintoneが最も向いているのは、スタッフ同士での情報共有です。パソコンさえあれば、必要なデータ(レコード)にいつでもアクセスできるので、例えばエクセルファイルをメールで送る、共有フォルダで共有する、といったことが必要なくなります。
また、スマートフォンアプリもあるので、ネットワーク環境さえあれば、出先であっても場所を選ばず必要なレコードにアクセスすることが出来るのも強みです。特に営業担当者が多い組織などは重宝するでしょう。
kintoneが苦手なこと
万能のようなkintoneですが、苦手なこともあります。要件によってはkintoneを利用しない方がいい場合もあるので、注意しましょう。
帳票印刷
基本的にWEBシステムなので、印刷はブラウザ経由になります。必要なレコードを印刷するのは問題ないですが、例えば契約書や見積書など、整形されたレイアウトで出力するのは難しいです。これを解決するために、プラグインでプリントクリエイターやレポトンといったものがサービス提供されていますが、細かな要件があると、使いにくい場合があります。
ちなみにそれを解決するために、エクセルVBAのファイルを作成しました。詳細は下記をご覧ください。
外部利用者が多数にのぼる場合
組織内だけで利用者が完結する場合は利用者の上限が見えるので、コストが正確に見積もれます。一方、「外部の協力会社などのユーザに発注データを入力してもらう」といった用途においては、ユーザ数が大きく変動するため、見積が難しくなります。ゲストユーザという費用を抑えた契約プランもありますが、それ程格安というわけではないので、環境の異なる大人数の外部利用者を抱えるのには向いていないと言えます。
ネット環境がなければ業務に支障が出る
サイボウズkintoneはWEBを利用したシステムなので、インターネットへの接続が出来なくなった場合、当然ながら一切のアプリにアクセスすることが出来なくなります。
したがって、業務で利用するには、インターネット接続の不具合=業務の停止となってしまうため、回線やネットワーク機器のバックアップや、インターネット接続できない場合の業務手順などを手当しておく必要があります。
なお、サービス自体の稼働率は実績ベースで99.9%以上となっています。詳しくは下記をご覧ください。
稼働率には計画停止時間も含まれるため、それを除いた場合もっと高くなると思われます。計画停止は、深夜に設定されていることが多いため、24時間対応の業種以外では業務上の支障はほぼ無いと言えますが、接続出来なくなることが業務の停止となるクラウドサービス特有のリスクには留意しておくべきです。
kintoneで作りこむべき業務システムとは
会計や人事・労務など、組織に関わらず共通の業務については、既存のパッケージシステムや、クラウドサービスを利用した方がよいです。一方、組織独自の業務については、kintoneなどでオリジナルのシステムを作りこんだ方がよい場合もあります。
対象となる組織規模
「ERPを導入するには、利用しない機能も多すぎるし、費用的にも過大である」、かといって「エクセルで管理するには限界がある」といった、事業成長の踊り場にある組織はkintone導入が適していると思われます。
システムに置き換える対象となる業務(before)
例えば受注業務を例に考えてみます。
従来の業務フローは、メール、電話、FAXで受けた受注情報を事務担当者がエクセルの受注台帳に記載します。
受注台帳には、日付、顧客名、受注金額、受注概要、営業担当者などの情報が記載されていますが、詳細については、営業担当者が追記します。事務担当者が受けた受注に関しても、営業担当者が個別にお客様に確認し、内容をチェックします。
営業担当者は、帰社後、共有フォルダにあるエクセルの受注台帳を開き、細かな仕様や確定した金額を記載しますが、時間的に複数の営業担当者が同時に編集することもあり、ファイルの競合(コンフリクト)が発生することもしばしばあります。
さらに納品が終わったら、受注台帳の該当レコードのフラグを完了にし、それを抽出して事務担当者が販売管理システムに連携し、請求書を発行します。
システム化した業務(after)
これをkintoneに置き換えた場合、下記のように改善されます。
メール、FAXで受注した分については、従来通り事務担当者がkintoneに入力します。それを見た営業担当者がお客様に詳細情報を確認し、kintoneに直接入力します。これは外出先からでも出来るので、入力のためだけに帰社する必要もありません。
また、レコード単位で制御されるため、更新の競合が発生することもありません。
さらに帳票印刷用の販売管理システム連携ですが、そもそも連携する必要がなくなり、kintoneから直接出力できるようになります。
副次効果として、マスタ化されていなかった顧客情報がkintone上でマスタとして定義されたため、取引対応履歴もすぐに閲覧できるようになりました。
まとめ
この例のように、
- 組織内で完結している業務であること
- 複数人でレコードを参照する業務であること
- クラウド化することで業務効率の向上につながること
が満たされている要件であれば、kintoneとの親和性が高いと思われます。
今回は受注業務という例を出しましたが、顧客カルテ・対応履歴や、営業日報、在庫管理など、上記に該当する業務であれば、効果を出しやすいでしょう。
その他の情報
NPOなど、非営利組織には格安プランも提供されています
あまり知られていないのですが、NPOなどの非営利組織には格安で利用できるプランが提供されています。
ユーザ数300人までであれば、年額約10,000円という破格の値段でkintoneをはじめとしたサイボウズドットコムのサービスが利用できます。サイボウズ社のCSRの一環と思われます。
非営利組織の方は是非利用を検討した方がよいと思います。
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